今回は、「ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験」の読書ログです。
2023年10月以降に読んだ本はブクログの本棚に記録しています。よければこちらもご覧ください~。
書籍情報
書名:ドキュメント 宇宙飛行士選抜試験
著者:大鐘 良一 , 小原 健右
出版社:光文社
ISBN:9784334035709
書評
どんな本か
日本で4度目に実施された宇宙飛行士選抜試験に密着したドキュメンタリー本です。たぶんですが、当時テレビでも放映したドキュメンタリーを書籍化したのかな、と思っています。逆かもしれませんが。
目次
- 第1章 選び抜かれた10人の”プロフェッショナル”たち
- 第2章 ”極限のストレス”に耐える力
- 第3章 ”危機”を乗り越える力
- 第4章 NASAで試される”覚悟”
- 第5章 宇宙飛行士はこうして選ばれた
どんな人向けか
おすすめしたい人
- 将来宇宙飛行士になってみたくて、今までの試験内容を知りたい人
- 宇宙飛行士選抜試験がどんな試験だったか知りたい人
- 情熱大陸みたいなドキュメンタリーが大好物な人
場合によってはおすすめしたい人
- 宇宙関係の仕事に興味がある人
- 挑戦する系の本を読んでみたい人
- よくある自己啓発本に飽きてきた人
読み始めたきっかけ
何かの研修か、別の本の紹介欄にあったかで、紹介されたんだと思います。結構前からamazonのほしいものリストに登録してあって、新しいkindle本を買いたくなったタイミングで購入しました。
感想
全般的な感想
宇宙飛行士選抜ってどんな試験なんだろうと思い読み始めましたが、想像以上に過酷な内容でした。
最終試験で初めて顔を合わせた候補生同士の閉鎖環境での共同生活、その状態での折り紙・クイズ・ロボット作成等のチーム課題。NASAのあるアメリカのヒューストンへ渡航し、面接・課題解決。加えて、ストレス耐性やコミュ力等の精神面での査定、健康状態等の体力面での徹底的な検査。
これらを2週間でこなすのだから、とてつもないハードスケジュールだなと思いました。
宇宙飛行士選抜試験の全工程のドキュメンタリーではありますが、主にページ数が割かれたのは、最終試験でした。その際の候補生10人が、濃淡あれど掘り下げられており、それぞれにどんな背景があって候補生となったのかを知れたのが面白かったです。大人になってから目指した人もいましたが、ほとんどは子供の頃から夢見ていたそうです。その頃の夢を20年ほど持ち続け、最終試験に漕ぎつけるというのは並大抵なことではなく、よほど強い興味を持っていたんだなと感じます。
ただ、掘り下げに濃淡があり、あの人はどこ?状態になることも多かったので、もう少し平等な掘り下げが欲しかったなあと思いました。
興味深かった点1:NASAとJAXAの試験の違い
※試験が行われた2010年当時のお話なので、現在は変わっているかもしれません。
NASAとJAXAでは、選抜試験の過程が違うという点が興味深かったです。
日本では、本書にもある通り、2週間かけてじっくりと過酷な試験を行うのに対し、アメリカのNASAでは、面接試験を中心として選抜を実施するそうです。
その違いがどこから来るかというと、選抜合格後の進路の違いです。
というのも、NASAの試験って、合格すれば宇宙にいずれ行けるという保証があるものではないそうです。調べていないのでわかりませんが、もしかすると、そもそも宇宙飛行士選抜試験ではなく、NASA職員試験とか、技術者試験なのかもしれません。
一方、JAXAの宇宙飛行士選抜試験は、合格し、訓練を通過し健康を維持し待ち続ければ、いずれ全員が宇宙に行くことになるそうです。つまり、合格してから「やっぱり向いてないわ~」のようなことがないよう、宇宙に行くために必要な体力・精神力・技術力を最初からある程度兼ね備えていないと、お話になりません。それを見極めるために、過酷な試験を実施するのかなと思いました。
また、2010年の試験では、わざわざNASAまで行って、現地の職員も巻き込んだうえで試験をしました。これは、そもそもNASAの職員に気に入られないと、宇宙に行く順番が後ろになるため、あらかじめ相性を確認しておく、というような背景があるそうです。JAXAの飛行士はNASAで訓練を受けてそこから宇宙に飛び立つので、相性確認が必要なんですね。
力関係とか、国同士の協力体制とか、そういうものが垣間見える一面でした。
興味深かった点2:宇宙への憧れだけでは難しい
就活ってなんでもそうですが、宇宙飛行士も例外ではなく、憧れだけで飛び込んでいくには難しい世界でした。
宇宙飛行士に対する印象として
- 自分で提案して宇宙で研究をできる
- 有名になれる
- そもそも宇宙に行ける
みたいな、華々しさが先行するイメージです。
でも実際の宇宙飛行士は、研究者ではなく技術者であり、分単位で刻まれたスケジュールに従って働く必要があり、ISSに滞在することになれば半年間はシャワーを浴びることができず、体はボロボロになり、、、となかなか過酷な生活をすることになります。
加えて特殊なのが、冗談抜きで死と隣り合わせな環境であるということです。
これが大げさでも何でもないことを示すのが、2010年時点で、宇宙飛行士の事故率が66回に1回であるというデータです。
さらに、地上から飛び立つときだけでなく、ISSの外で機器の操作を行ったりISSをメンテしたり、ISS自体に異常が起きた時に対応したりするとき、その環境はものすごく危険です。
その現実に対応し、常に冷静に、プレッシャーに耐え続ける精神力を持ち続ける必要があります。
よく、働くことに対し、好きというだけではどうにもならない、と言いますが、宇宙飛行士はその最たる例だなと感じました。
おわりに
ということで、宇宙飛行士選抜試験のドキュメンタリー本を紹介しました。
自分が生きている世界とは一味違うことをしている人を覗くというのは、それだけで少しわくわくしますよね。
ドキュメンタリーは、本で読むよりテレビで観る派だったんですが、本書を読んで少し考えが変わりそうです。
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